そう声が聞こえてきた時、私は思わず入り口で立ち止まってしまった。ついに彼女たちが言ってはいけない言葉まで口にした時、言われたのは私じゃないとわかっていても、息が詰まった。恐る恐る中を覗くと、悪口を言われていたのは、同じクラスの泉マキさんだった。端正な顔立ちにすらりとした体形。最初あった時はモデルかと思ったくらいだ。所謂スクールカーストの上位に居そうな彼女がいじめられていることに衝撃を受け、私は硬直した。
「まじで、もう学校来ないでくんない?」
誰かがそう言うと、周りの女子達が笑った。やめさせよう。そう思った私は一歩前に踏み出た。けれど私が口を開くより前に、誰かが言った。
「言いたいことは、それで終わり?」
誰が言ったのかとあたりを見渡したが、周りには誰もいない。まさかと思って女子トイレの方をもう一度見た。すると、そこには女子達に対面していた泉さんが、まっすぐ顔を上げていた。凛としている。ちっとも怯えていない。私にはそう見えた。
「は?なにその態度」
女子の一人が冷ややかにそう言ったが、泉さんの答えは冷酷だった。
「こっちの台詞なんだけど。話があるっていうからわざわざ休み時間割いて付き合ってあげたのに、そんだけ頭数揃ってのご注文が、その程度?」
「なに。まじでうざいんだけど」
舌打ちをされる中、泉さんはシャンと背筋を伸ばしていた。
「もう私、あんた達と話すことないし、行っていい?」
泉さんはそれだけ言うと歩き出そうとした。その瞬間、女子の一人が泉さんを叩こうと手をあげたので、私は思わず飛び出した。
「やめなよ」
私がいる事に気がついていなかったのだろう。突然そう声をかけられて、その女子のあげた手がびくついた。女子は手を上げたまま私を睨み、そしてゆっくりと降ろした。
「なに」
いらついた様にそう言われたが、もう後には引けないので、私は同じことを繰り返した。心臓が潰れそうなくらいに緊張していた。
「やめなよ」
しばらく沈黙が続き、数人の舌打ちが聞こえて、彼女たちはその場を去った。
「ありがとね」
まるでハンカチを貸した後みたいに、泉さんが明るくそう言った。
「え。いや。というか、大丈夫、だった?」
手洗い場のふちに腰かける彼女に駆け寄ると、泉さんは笑いながら手を振った。
「あんなの何ともないって。というか八百瀬ちゃんの方が怖かったでしょ。ごめんね」
「まじで、もう学校来ないでくんない?」
誰かがそう言うと、周りの女子達が笑った。やめさせよう。そう思った私は一歩前に踏み出た。けれど私が口を開くより前に、誰かが言った。
「言いたいことは、それで終わり?」
誰が言ったのかとあたりを見渡したが、周りには誰もいない。まさかと思って女子トイレの方をもう一度見た。すると、そこには女子達に対面していた泉さんが、まっすぐ顔を上げていた。凛としている。ちっとも怯えていない。私にはそう見えた。
「は?なにその態度」
女子の一人が冷ややかにそう言ったが、泉さんの答えは冷酷だった。
「こっちの台詞なんだけど。話があるっていうからわざわざ休み時間割いて付き合ってあげたのに、そんだけ頭数揃ってのご注文が、その程度?」
「なに。まじでうざいんだけど」
舌打ちをされる中、泉さんはシャンと背筋を伸ばしていた。
「もう私、あんた達と話すことないし、行っていい?」
泉さんはそれだけ言うと歩き出そうとした。その瞬間、女子の一人が泉さんを叩こうと手をあげたので、私は思わず飛び出した。
「やめなよ」
私がいる事に気がついていなかったのだろう。突然そう声をかけられて、その女子のあげた手がびくついた。女子は手を上げたまま私を睨み、そしてゆっくりと降ろした。
「なに」
いらついた様にそう言われたが、もう後には引けないので、私は同じことを繰り返した。心臓が潰れそうなくらいに緊張していた。
「やめなよ」
しばらく沈黙が続き、数人の舌打ちが聞こえて、彼女たちはその場を去った。
「ありがとね」
まるでハンカチを貸した後みたいに、泉さんが明るくそう言った。
「え。いや。というか、大丈夫、だった?」
手洗い場のふちに腰かける彼女に駆け寄ると、泉さんは笑いながら手を振った。
「あんなの何ともないって。というか八百瀬ちゃんの方が怖かったでしょ。ごめんね」