高校生になって、2年生の夏、皆で海に行った。昔から海が大好きな奈月はこれでもかと言うくらいはしゃいでいたけれど、上着を着たまま海に入ることはしなくて、その理由は誰も聞かなかった。それでもビーチパラソルの下で海を眺めていた奈月の表情は穏やかで、皆も暇さえあれば奈月の所へ行き、体調を心配したり冗談を飛ばしあって笑っていた。海で遊んで、バーベキューをして、花火をして。
線香花火を眺めて微笑む奈月の横顔を、俺は絶対に忘れない。
恥ずかしくなって軽口で誤魔化してしまったけど、クリスマスにはデートに誘った。
「クリスマス、千里と2人で出かける事になった。」
「奈月に聞いた。良かったな。」
クリスマスの前日。照れ臭そうに笑って俺にそう告げた神谷。
「お前モテるのにヘタレだからなー。」
「うるさいよ。」
「よく頑張りまちたね~」
俺のからかいに笑って肩を叩く。
「とか言ってる要は?奈月ちゃん誘えたの?」
「・・・一応。」
「なんだよ一応って。」
誘えたは誘えたけど誤魔化しちゃった、そう素直に言えば神谷は吹き出して。
「お前の方がヘタレじゃん。」
「うるせえよ。」
あっという間に形勢逆転。その後しばらくいじられ続けてしまった。
クリスマス当日。プレゼントに選んだのはガラス玉のキーホルダーだった。たまたま見つけて、絶対に奈月に渡したいと思った。『海を閉じ込めたみたい。』なんて言葉を紡ぐ奈月の事が、たまらなく愛しかった。
・・・本当は。渡すときに、告白しようと思っていた。何回も頭の中で言葉を反芻させて。何度も口に出そうとした。けど、言えなかった。怖かったのだ。奈月のそばにいれなくなる事が、怖かった。俺の余計な感情が奈月を1人にしてしまうのではないか、そう思うと怖くてたまらなくて。俺は結局弱虫だ。
奈月は元気だった。よく食べて、よく寝て、よく笑って、でもその左手の傷だけは消えなかった。消えるどころか増えていた。でも俺は何も言えなかった。彼女を救いたくて、でも術が分からなくて、ただ傍にいることしか出来なかった。傍にだけはいたかった。
いつだって奈月は、「大丈夫。」 だと、そう言って、俺の目を真っ直ぐに見て、
「要が側にいてくれるから、私は辛くない。」
そう言って、俺の大好きな笑顔で笑うのだ。
奈月はいつも不安定だった。
いつも儚げで、今にも消えてしまいそうで。いつだって、怖かった。それはきっと彼女も一緒だったのだろう。
それは、まだ寒いけど、よく晴れた日だった。
線香花火を眺めて微笑む奈月の横顔を、俺は絶対に忘れない。
恥ずかしくなって軽口で誤魔化してしまったけど、クリスマスにはデートに誘った。
「クリスマス、千里と2人で出かける事になった。」
「奈月に聞いた。良かったな。」
クリスマスの前日。照れ臭そうに笑って俺にそう告げた神谷。
「お前モテるのにヘタレだからなー。」
「うるさいよ。」
「よく頑張りまちたね~」
俺のからかいに笑って肩を叩く。
「とか言ってる要は?奈月ちゃん誘えたの?」
「・・・一応。」
「なんだよ一応って。」
誘えたは誘えたけど誤魔化しちゃった、そう素直に言えば神谷は吹き出して。
「お前の方がヘタレじゃん。」
「うるせえよ。」
あっという間に形勢逆転。その後しばらくいじられ続けてしまった。
クリスマス当日。プレゼントに選んだのはガラス玉のキーホルダーだった。たまたま見つけて、絶対に奈月に渡したいと思った。『海を閉じ込めたみたい。』なんて言葉を紡ぐ奈月の事が、たまらなく愛しかった。
・・・本当は。渡すときに、告白しようと思っていた。何回も頭の中で言葉を反芻させて。何度も口に出そうとした。けど、言えなかった。怖かったのだ。奈月のそばにいれなくなる事が、怖かった。俺の余計な感情が奈月を1人にしてしまうのではないか、そう思うと怖くてたまらなくて。俺は結局弱虫だ。
奈月は元気だった。よく食べて、よく寝て、よく笑って、でもその左手の傷だけは消えなかった。消えるどころか増えていた。でも俺は何も言えなかった。彼女を救いたくて、でも術が分からなくて、ただ傍にいることしか出来なかった。傍にだけはいたかった。
いつだって奈月は、「大丈夫。」 だと、そう言って、俺の目を真っ直ぐに見て、
「要が側にいてくれるから、私は辛くない。」
そう言って、俺の大好きな笑顔で笑うのだ。
奈月はいつも不安定だった。
いつも儚げで、今にも消えてしまいそうで。いつだって、怖かった。それはきっと彼女も一緒だったのだろう。
それは、まだ寒いけど、よく晴れた日だった。

