「なっちゃん料理上手になったわねー。」
夕食は出来るだけみんなで揃って食べる事になっているので、拓海さんの帰宅を待ってからの夕食だ。
スーパーで鶏肉が安く売っていたから、と選んだ唐揚げはかなり好評で。
「ほんとですか。」
褒められて自然と頬が緩む。
「あー、確かに。最初に比べてうまくなったよな。」
「・・・なんか拓海さんに褒められると気持ち悪いです。」
「なんでだよ。」
「ていうか最初に比べてって何よ、素直に褒めなさいよね。」
鈴香さんの言葉に拓海さんが舌打ちで返事を返す。おいおいおい、と思っていれば、ねーなっちゃん、と私に話題が流れてきた。よし、今から私は空気になろう。逃げるが勝ち。
「俺もご飯炊くの上手くなったでしょ?」
「いやご飯炊くのに上手いも下手もないだろ」
「分かってないなー、拓海さんは。だから彼女出来ないんだよ」
「それ絶対関係ないだろ。お前後でしばくからな。」
ケラケラと笑う要に拓海さんの蹴りが飛んでそこから始まるプロレスごっこ。「ちょっとうるさいわよ。」と鈴香さんの注意が飛ぶ。
「ちょっと、ご飯中にやめてください。」
「悪いのは要の方だろ。」
「うわー、そうやってすぐ人のせいにする。」
「拓海さん、大人げないわよ。」
「そうだよね鈴香さん、もっと言ってやって。」
「要も調子に乗るな。」
ご飯を食べている時もいつも賑やかだ。怒られた拓海さんと要はいじけつつも静かになる。そんな2人の動作がそっくりで、兄弟みたい、と吹き出せば鈴香さんと目が合って、また笑ってしまった。
「奈月、これ分かんない。」
「教科書109ページを読んで下さい」
「ここは?」
「・・・92ページ!」
「これ」
「130ページ!!」
「なんだよ冷たいな」
と口を尖らせながら教科書を開く要。夕食の後片付け担当は基本鈴香さんと拓海さんのため、部屋に引き上げた私達は2人で課題タイム。運動は得意な要だが、勉強はあまり得意ではなくて。
「この問題意味わかんないんだけど。」
「・・それ中学校の時習った公式だからね。」
…いや、はっきり言えばかなり出来ない。何でもかんでも質問してくる要をあしらって自分の勉強に集中していれば、飽きたのか要は部屋を物色し始めた。
「要、勉強して。」
「飽きた。」
「・・・その課題もう提出期限過ぎてるよね。」
「・・・」
「また居残りで課題増やされてももう見てあげないからね。」
そういって要を見れば、ふくれっ面と目が合う。どちらも目を逸らさずにしばし見つめ合ったあと、ため息をついたのは、わたし。
「・・・後で見てあげるから」
その言葉にさっきとは一転して満面の笑みを見せて机へと戻る。犬かよお前。
「出来るとこだけやってなよ。」
「はーい。」
「あと今度クレープ奢ってね」
「500円以内な。」
「だめ、640円のいちごとみかんとカスタードクリームが乗ってるやつ」
「・・・はいはい。」
要にクレープの約束を取り付けて満足した私は再び課題に取りかかった。
少し集中して自分の課題に取り組んでいれば、不意に要の視線を感じて顔を挙げる。彼の視線は私の手元に向かっていて、ああこれか。
「何それ、しおり?」
「そう。」
「へえ、そんな可愛いの教科書なんかに挟んで使っちゃっていいの?テンション落ちない?」
「落ちないよ、むしろ上がる。」
お気に入りのしおりを教科書に挟んでいる私を見て、要はなんだか不思議そうに首を傾げる。可愛いからこそ常時目の着く所に置いておきたいんだけど、と力説したけど全然分かってくれなかった。くそう。
「いいよいつか要も大人になったら分かるよ。」
「いや同い年な?」
おどけてそういえば頭を気づかれてしまって、顔を見合せて笑った。
・・・要と付き合ってる、と今朝のように勘違いされる事は多く、実際に全然知らない後輩の女の子に聞かれたこともある。
けれど私と要はそんな関係ではなく。かといって、友達、という言葉もなんかしっくりこない。
「なー。」
「なに?」
「全然分からない。」
「・・・もう。」
眉をへの字にして本当に困った顔をして私の方を見るから、思わず笑ってしまう。
「授業中ちゃんと聞いてる?」
「・・・・聞いてる。」
「バレバレの嘘つくな。」
だって高センの授業めちゃくちゃ眠いんだもん、そう言って要は欠伸をする。思い出すだけで眠くなってきちゃった、なんて言って笑って。
それに関しては私も同意だ。高センこと高橋先生は糸目が特徴の50代の数学の先生で、いつも本当に教科書通りの授業をする。声も平坦で、問題を当てるのも必ず席順通り。生徒からしたらとてもありがたい先生だ。眠いけど。
「高セン、いつも目開いてないしね。」
「だよなあ。むしろ先生が寝てるよな!?」
なんて言って目尻指をあてて先生の真似をするから、思わずケラケラと笑ってしまった。
・・・そうだな、私達はもちろん恋人ではない。でもただの友達でもない。それよりも家族という言葉が近いのかもしれない。
夕食は出来るだけみんなで揃って食べる事になっているので、拓海さんの帰宅を待ってからの夕食だ。
スーパーで鶏肉が安く売っていたから、と選んだ唐揚げはかなり好評で。
「ほんとですか。」
褒められて自然と頬が緩む。
「あー、確かに。最初に比べてうまくなったよな。」
「・・・なんか拓海さんに褒められると気持ち悪いです。」
「なんでだよ。」
「ていうか最初に比べてって何よ、素直に褒めなさいよね。」
鈴香さんの言葉に拓海さんが舌打ちで返事を返す。おいおいおい、と思っていれば、ねーなっちゃん、と私に話題が流れてきた。よし、今から私は空気になろう。逃げるが勝ち。
「俺もご飯炊くの上手くなったでしょ?」
「いやご飯炊くのに上手いも下手もないだろ」
「分かってないなー、拓海さんは。だから彼女出来ないんだよ」
「それ絶対関係ないだろ。お前後でしばくからな。」
ケラケラと笑う要に拓海さんの蹴りが飛んでそこから始まるプロレスごっこ。「ちょっとうるさいわよ。」と鈴香さんの注意が飛ぶ。
「ちょっと、ご飯中にやめてください。」
「悪いのは要の方だろ。」
「うわー、そうやってすぐ人のせいにする。」
「拓海さん、大人げないわよ。」
「そうだよね鈴香さん、もっと言ってやって。」
「要も調子に乗るな。」
ご飯を食べている時もいつも賑やかだ。怒られた拓海さんと要はいじけつつも静かになる。そんな2人の動作がそっくりで、兄弟みたい、と吹き出せば鈴香さんと目が合って、また笑ってしまった。
「奈月、これ分かんない。」
「教科書109ページを読んで下さい」
「ここは?」
「・・・92ページ!」
「これ」
「130ページ!!」
「なんだよ冷たいな」
と口を尖らせながら教科書を開く要。夕食の後片付け担当は基本鈴香さんと拓海さんのため、部屋に引き上げた私達は2人で課題タイム。運動は得意な要だが、勉強はあまり得意ではなくて。
「この問題意味わかんないんだけど。」
「・・それ中学校の時習った公式だからね。」
…いや、はっきり言えばかなり出来ない。何でもかんでも質問してくる要をあしらって自分の勉強に集中していれば、飽きたのか要は部屋を物色し始めた。
「要、勉強して。」
「飽きた。」
「・・・その課題もう提出期限過ぎてるよね。」
「・・・」
「また居残りで課題増やされてももう見てあげないからね。」
そういって要を見れば、ふくれっ面と目が合う。どちらも目を逸らさずにしばし見つめ合ったあと、ため息をついたのは、わたし。
「・・・後で見てあげるから」
その言葉にさっきとは一転して満面の笑みを見せて机へと戻る。犬かよお前。
「出来るとこだけやってなよ。」
「はーい。」
「あと今度クレープ奢ってね」
「500円以内な。」
「だめ、640円のいちごとみかんとカスタードクリームが乗ってるやつ」
「・・・はいはい。」
要にクレープの約束を取り付けて満足した私は再び課題に取りかかった。
少し集中して自分の課題に取り組んでいれば、不意に要の視線を感じて顔を挙げる。彼の視線は私の手元に向かっていて、ああこれか。
「何それ、しおり?」
「そう。」
「へえ、そんな可愛いの教科書なんかに挟んで使っちゃっていいの?テンション落ちない?」
「落ちないよ、むしろ上がる。」
お気に入りのしおりを教科書に挟んでいる私を見て、要はなんだか不思議そうに首を傾げる。可愛いからこそ常時目の着く所に置いておきたいんだけど、と力説したけど全然分かってくれなかった。くそう。
「いいよいつか要も大人になったら分かるよ。」
「いや同い年な?」
おどけてそういえば頭を気づかれてしまって、顔を見合せて笑った。
・・・要と付き合ってる、と今朝のように勘違いされる事は多く、実際に全然知らない後輩の女の子に聞かれたこともある。
けれど私と要はそんな関係ではなく。かといって、友達、という言葉もなんかしっくりこない。
「なー。」
「なに?」
「全然分からない。」
「・・・もう。」
眉をへの字にして本当に困った顔をして私の方を見るから、思わず笑ってしまう。
「授業中ちゃんと聞いてる?」
「・・・・聞いてる。」
「バレバレの嘘つくな。」
だって高センの授業めちゃくちゃ眠いんだもん、そう言って要は欠伸をする。思い出すだけで眠くなってきちゃった、なんて言って笑って。
それに関しては私も同意だ。高センこと高橋先生は糸目が特徴の50代の数学の先生で、いつも本当に教科書通りの授業をする。声も平坦で、問題を当てるのも必ず席順通り。生徒からしたらとてもありがたい先生だ。眠いけど。
「高セン、いつも目開いてないしね。」
「だよなあ。むしろ先生が寝てるよな!?」
なんて言って目尻指をあてて先生の真似をするから、思わずケラケラと笑ってしまった。
・・・そうだな、私達はもちろん恋人ではない。でもただの友達でもない。それよりも家族という言葉が近いのかもしれない。