あれよあれよという間に、今年も終盤に差し掛かっていた。大掃除や新年の準備やらで日々はあっという間に過ぎて。…そう、大掃除。葛木荘の大掃除は大変なんてものじゃなかった。言葉にするのも恐ろしい。記憶から抹消したいくらいである。
新年は葛木荘のみんなと共に迎えた。テレビを見て、年越しそばを食べて、鈴香さんと拓海さん、そして珍しく雨野さんもお酒を飲んでいて。年を越してからも明け方近くまで皆で騒いでいたものだから、鈴香さんと拓海さんはお昼近くまで寝ていたそう。
初詣へ行く予定があった私と要は、少ない睡眠時間ながらもなんとか起床して、雨野さんは挨拶回りに行くと言って、私達よりも早く家を出て行っていた。
慌ただしく過ぎていくお正月。いつのまにか冬休みも終わり、始まる3学期。時が経つのは早いもので _ もう今年は、受験生である。
「さむ・・・。」
1月も終盤となった休日の朝。平日と比べて遅い起床。それでもまだ寝足りなく感じ、寝ぼけ眼をこすりながら台所へと続く廊下を歩く。今日は鈴香さんも拓海さんも休みだと聞いていたので、まだ誰も起きてきていないだろう。と、思っていたのだが。微かに聞こえてきたのはテレビの音声。誰かいる?
なんとなく、ドアをの隙間から中を覗く。
「・・・?」
そこには椅子に座ってテレビを見つめる人の姿があった。茶色の髪に愛用しているもこもこのパジャマ。あれはきっと鈴香さんだ。彼女は椅子に座って真剣にテレビを見つめていた。・・・思わず、声をかけるのを躊躇ってしまうほど、鈴香さんの表情は硬かった。驚愕、焦り、不安。そんな感情が入り混じったような、 暗い表情。ドアに隠れたまま耳をすませば、どうやら流れているのは毎朝やっているニュース番組のようだ。
『大手企業で発覚したパワハラ問題。奪われたのは新入社員の女性の命でした。事件が発覚したのは先週、自宅で・・・』
神妙な顔で喋っているのはいつもの人気アナウンサー。
『本当にっ・・・本当にいい子で・・・っ・・・。』
泣きながらインタビューを受けているのは、亡くなってしまった人の会社の同僚らしい。
『警察は調べを続けているようです。』
・・・鈴香さんの表情は全く動いていなかった。一言も発する事なく、ただテレビをじっと見つめていた。そして画面が移り変わって、亡くなった人の顔写真と名前が映し出される・・・前に。ガタンッ、という大きな音がしてテレビが突然消える。驚いて飛び跳ねてしまう。鈴香さんがテレビを消して、リモコンを机の上に強く置いたのだ。そしてそのまま暗くなったテレビを見つめる。
__怖い。と思った。
テレビを見つめる鈴香さんの目は真っ暗だった。いつも見ていたはずの鈴香さんではないような気がして、しばらくそのまま固まってしまう。しかしずっとここに立っている訳にもいかず、なんとなく悪い事をしてしまった気分を抱えたまま恐る恐るドアを開けた。その音にはっ、と振り向いた鈴香さんはすぐに表情を切り替えて、いつもと同じ笑顔を見せた。そこにさっきの暗い瞳は無かった。
「あ、なっちゃん。おはよう。」
「・・・おはようございます。早いですね。」
「なんか目覚めちゃって。なっちゃんは、今、降りてきたの?」
「そうです。」
じっと見つめられて、スルリと口から嘘がこぼれた。ふーん、と鈴香さんは曖昧に頷いて、もう一度テレビへと視線を向ける。私もそれ以上何も言わずに朝食の準備へと急いだ。その後は特に変わった様子もなく、いつも通りの鈴香さんだった。けれど、あの表情と暗い目は、中々私の中から消えてくれなかった。
新年は葛木荘のみんなと共に迎えた。テレビを見て、年越しそばを食べて、鈴香さんと拓海さん、そして珍しく雨野さんもお酒を飲んでいて。年を越してからも明け方近くまで皆で騒いでいたものだから、鈴香さんと拓海さんはお昼近くまで寝ていたそう。
初詣へ行く予定があった私と要は、少ない睡眠時間ながらもなんとか起床して、雨野さんは挨拶回りに行くと言って、私達よりも早く家を出て行っていた。
慌ただしく過ぎていくお正月。いつのまにか冬休みも終わり、始まる3学期。時が経つのは早いもので _ もう今年は、受験生である。
「さむ・・・。」
1月も終盤となった休日の朝。平日と比べて遅い起床。それでもまだ寝足りなく感じ、寝ぼけ眼をこすりながら台所へと続く廊下を歩く。今日は鈴香さんも拓海さんも休みだと聞いていたので、まだ誰も起きてきていないだろう。と、思っていたのだが。微かに聞こえてきたのはテレビの音声。誰かいる?
なんとなく、ドアをの隙間から中を覗く。
「・・・?」
そこには椅子に座ってテレビを見つめる人の姿があった。茶色の髪に愛用しているもこもこのパジャマ。あれはきっと鈴香さんだ。彼女は椅子に座って真剣にテレビを見つめていた。・・・思わず、声をかけるのを躊躇ってしまうほど、鈴香さんの表情は硬かった。驚愕、焦り、不安。そんな感情が入り混じったような、 暗い表情。ドアに隠れたまま耳をすませば、どうやら流れているのは毎朝やっているニュース番組のようだ。
『大手企業で発覚したパワハラ問題。奪われたのは新入社員の女性の命でした。事件が発覚したのは先週、自宅で・・・』
神妙な顔で喋っているのはいつもの人気アナウンサー。
『本当にっ・・・本当にいい子で・・・っ・・・。』
泣きながらインタビューを受けているのは、亡くなってしまった人の会社の同僚らしい。
『警察は調べを続けているようです。』
・・・鈴香さんの表情は全く動いていなかった。一言も発する事なく、ただテレビをじっと見つめていた。そして画面が移り変わって、亡くなった人の顔写真と名前が映し出される・・・前に。ガタンッ、という大きな音がしてテレビが突然消える。驚いて飛び跳ねてしまう。鈴香さんがテレビを消して、リモコンを机の上に強く置いたのだ。そしてそのまま暗くなったテレビを見つめる。
__怖い。と思った。
テレビを見つめる鈴香さんの目は真っ暗だった。いつも見ていたはずの鈴香さんではないような気がして、しばらくそのまま固まってしまう。しかしずっとここに立っている訳にもいかず、なんとなく悪い事をしてしまった気分を抱えたまま恐る恐るドアを開けた。その音にはっ、と振り向いた鈴香さんはすぐに表情を切り替えて、いつもと同じ笑顔を見せた。そこにさっきの暗い瞳は無かった。
「あ、なっちゃん。おはよう。」
「・・・おはようございます。早いですね。」
「なんか目覚めちゃって。なっちゃんは、今、降りてきたの?」
「そうです。」
じっと見つめられて、スルリと口から嘘がこぼれた。ふーん、と鈴香さんは曖昧に頷いて、もう一度テレビへと視線を向ける。私もそれ以上何も言わずに朝食の準備へと急いだ。その後は特に変わった様子もなく、いつも通りの鈴香さんだった。けれど、あの表情と暗い目は、中々私の中から消えてくれなかった。

