そばにあを

すっかり暗くなってしまった道を拓海さんと2人で歩く。

「拓海さん。」
「ん?」
「遅くまで付き合わせちゃってごめんなさい。明日も仕事なのに。」
「別にいいよ。その友達の問題も解決しそうなんだろ?」
「・・・うん。」
「ならよかったじゃねえか。」
「・・・うん、ありがとう。」
「・・・ただ。」

そう言ってから拓海さんは右手を出す。・・・まさか。

「いったーい!!」

やられました、本日3回目のデコピン。本当に私のおでこへこんじゃうよ痛いよ。

「拓海さん手加減って言葉知らないんですか!?」
「さー?俺は聞いたことないな。」
「っ・・・人でなし!」

私の精一杯の暴言をはいはい、と受け流す。そして私の頭にポン、と手を置いて。

「あんま危ない事すんなよ。心配すんだろ。」
「・・・はい。ごめんなさい、ほんとにありがとうございました。」
「素直でよろしい。」

そう言って笑う拓海さんを見て、私も自然と笑みがこぼれる。秋の乾いた風を背に受けながら、皆が待っている葛木荘へと帰り道を急いだ。



後日、由香ちゃんと横山くんは無事仲直りした。横山くんから由香ちゃんに連絡をしたそうだ。どんな話をしたのか私には分からないけど、でも由香ちゃんはもう大丈夫、ととびきりの笑顔で言ってくれたし、誕生日の日を境に可愛い腕時計をつけてくるようになったから、上手くいったんだろうな、と一安心した。

・・・ちなみに、要の誕生日は。

「・・・おお、凄い。」
「どうですか、奈月シェフ腕を振るいました。」

これでもか、というくらい要の好物を食卓に並べた。我ながら頑張ったと思う。うん、私よくやった、拍手。・・・まあ、つまりは。

「これが私からの誕プレってやつですね。」
「・・・絶対俺の誕生日忘れてただろ。」
「・・・・ソンナコトナイヨ。」

要さん、大正解です。

「なっちゃん、取り皿って出してある?」
「あ、まだです!」
「おっけー!ちょっと拓海さん、用意手伝ってよね。」
「はいはい。」
「今日休んでていいのは要くんだけなんだから!」

鈴香さんに怒られて拓海さんが食器をとりに棚へと向かう。拓海さんが素直に従っているのが面白くて笑っていれば、要にきもい、と一蹴された。・・・きもいはひどいよ要くん。

でも私は知っている。要の使っているマグカップのデザインが今日から変わった事を。微笑ましくてニヤけてしまえば、奈月大丈夫?と今度は本気の心配をされてしまった。

まあ、何はともあれ。

「要、誕生日おめでとう。」
「・・・ありがとう。」

要が少し照れたように下を向くから、私も思わず照れてしまった。