今村不動産ご令嬢、今村麗子、二十三歳。

「蓮様、お久しぶりです、麗子です」

「ああ、麗子、久しぶり、親父の葬儀の時はありがとうな」

「いいえ、お役に立てなくてすみません」

「今日は仕事の事かな」

急に訪ねてきた彼女に俺は戸惑った。

はっきり言ってこのお嬢さんは苦手だ。

「麗子ね、恋人に振られたの、もう寂しくて、悲しくて、気分転換に、蓮様とデートしようと思って、いいでしょ、可愛い妹の頼み聞いて、ね、お願い」

このお嬢さんは万事この調子だ、まず自分を「麗子ね」と言う女は苦手だ。

それに俺はもう結婚してるし、父親になるのに、全くお構いなしなんだから困ったものだ。

取引先のお嬢さんだし、確かに妹みたいなもんだから、邪険にも出来ない。

まず、俺の悪いところは女性の頼みを断れないところだ。

まさか、美希に嫉妬させる為、うまくいけば、俺を奪おうと企んでいたことなど考えが及ばなかった。

俺もなぜこの時に二人で出かける事を拒まなかったのか、悔やんでも悔やみきれない。