「今日はこれを持っていきな、お酢が効いてると食欲も湧くかもしれないからな」

「ありがとうございます」

そのうち、商店街の人達がみんな集まって来た。

「美希ちゃん、おめでとう、元気な赤ちゃん産むんだよ」

「皆さんありがとうございます、頑張ります」

「美希、そろそろ帰ろうか」

「はい」

二人で商店街を後にした。

それから程なくして、つわりも収まってきた。

安定期に入った為、鏑木美希さんご懐妊のニュースが流れた。

俺は方々からおめでとうとメッセージや電話を貰い、対応に追われた。



そんな矢先、鏑木建設会社の取り引き先のご令嬢が会社にやって来た。

昔から父親通しが付き合いがあり、ゆくゆくは二人を結婚させたいと話していたとの事だった。

俺の父親も相手方の父親も他界して、そんな話は立ち消えになっていたと思われた。

俺も結婚して美希の妊娠も公表したので、まさか恋人に振られたご令嬢が今更、当時の話を持ち出してくるなんて想像もつかない事だった。