ドアを開けると泣いている私を見て、東條さんが問いかけた。

「どうなさいましたか」

「寂しくて、悲しくて、助けて」

そんな私のただ事ではない様子に、東條さんは思わず私を抱きしめた。
この時私の精神状態は大きく崩れていた。
抱きしめてくれた東條さんを彼だと思い「蓮、蓮」と叫び、東條さんの胸に顔を埋めた。

東條さんはしばらく私を抱きしめたままでいてくれた。私はやっと我に帰り、東條さんに縋っている事実に気づいた。

「ごめんなさい、私……」

「大丈夫です、自分の方こそ理性を失いました、社長に手を出すなと言われていたのに、自分は首ですね」

「蓮さんには言わないでください、心配しますので」

「かしこまりました」

「もう戻ってください、あまり永い時間だと蓮さんが変に思います」

「奥様を一人残して帰れません」

その時東條さんのスマホが鳴った。

「はい東條です」

『美希の様子はどうだ』

「大丈夫です」

『じゃあ戻ってこい』

「今はまだ戻れません」

『何故だ』