「そんなことしません」

東條さんは顔を赤くして答えた。

しばらくして彼の退院が決まった、そしてマンションに戻ってきた。

「やっぱりうちがいいな」

「まだ少しの間傷口痛むとのことですから、無理しないでください」

「大丈夫だ、早く復帰しないと仕事山積みだな」

「それからあいつのことだが、美希をテレビで見て、十年前と変わらず綺麗と感じて、急に手放したことが惜しくなり、復縁を迫った、しかし相手にされず、自分のものにならないのなら、一緒に死のうって思ったらしいぞ」

「そうですか」

「仕事が上手くいかなくて、途方に暮れていたらしい、美希は悪くない、もう考えるな、いいな」

「はい」

「明日から仕事復帰するぞ」

「えっ、大丈夫なんですか」

「もう大丈夫だ」

もっと一緒に居られるかと思ったのに……

心の思いが表情に出てしまった。

「何だ、心配はいらない」

「でも……」

「美希はわかりやすいな」

そう言って彼は笑った。

「今度の休みにまた出かける、それで勘弁しろ」