「美希、辛抱してくれ、しばらく忙しくて休みが取れない、お前をこれ以上危険な目に合わせられない、いつも側に居てやりたいがすまない、今はそれは叶わない」

「大丈夫です、部屋で大人しくしています」

彼は私を抱きしめてくれた、そして仕事へ向かった。

正直元彼にまた待ち伏せされたら嫌だが、なんで今更やり直そうなんて言ったんだろうと不思議だった。

身なりも相変わらず、おしゃれで、女性に困ることなどないはずだ。

しかし、初めて会った時、どこか寂しそうな雰囲気が気になった。

あれから十年も経っている。

仕事は順調だったのだろうか。

飛鷹 劉、彼もまた飛鷹コーポレーションの御曹司である。

私はインターネットで検索してみた。

驚きの事実が判明した。

飛鷹コーポレーションは倒産していた。

彼が父親の跡を継ぎ、社長を就任したが、業績が悪化し倒産した。

そんな矢先、テレビで私を見て、急に手放した事が惜しくなったのだろう。

あの頃彼は、私もそうだが、二人とも若かった。