「ああ」
「それで会えたのか」
「会えた、俺、彼女に惚れた、結婚する」
望月は絶句した。
「おい、話が飛躍しすぎだろう、彼女はお前を俺だと思ってるんだよな」
「そこまで、印象づけていないよ」
「わからないぜ、望月さんって今頃うっとりして、俺の名前を連呼してるかもよ」
俺は望月の胸ぐらを掴み、拳を上げた。
「冗談だよ、怒るなよ」
「彼女のことで冗談は俺には通用しない」
「わかった、わかった、それで一目惚れか」
「ああ、そうだ、まず優しい笑顔、それから三十五とは思えない可愛らしさ、控えめな雰囲気、目の前にいて、抱きしめたくなった」
俺は興奮して声が上擦った。
「蓮、落ち着け、そんなに愛らしいなら彼氏いるだろう、人妻かもしれない、指輪を確認したか?」
「いや、そこまで気が回らなかった」
そうだよな、俺がこれほど入れ込んでるなら、他の男が放っておくはずがないな。
でも、俺の気持ちの燃え上がる炎はますます勢いを増していった。
まず親父の会社の採用試験を受けた。