「幸子さんのお気に入りの商店街を残そうと親父さんは一生懸命奮闘してくれた」

俺は八百屋のご主人の話に耳を傾けていた。

「幸子さんは可愛らしい人だった、美希ちゃんは似ているところがあるな」

「そう言われてみると確かに」

「親父さんは美希ちゃんを可愛がってくれるだろう」

「はい、必要以上に」

八百屋のご主人は声高らかに笑った。

「そうか、きっと幸子さんと重ね合わせてるのかもしれないね」

親父はお袋のためにこの商店街を残そうとしていたのか。

「美希ちゃんも献立を聞きにきたことがあってね、幸子さんに教えた献立をそのまま教えた事がある」

「だから、お袋の味に近くてびっくりした事があります」

今度は俺が美希のためにこの商店街を守ろうとしている。

「お忙しいところありがとうございました」

俺は商店街を後にした。



私のスマホが鳴った、彼のお父様からの電話だった。

「美希ちゃんかい、最近ご無沙汰だけど何かあったのかい」