彼が私から目を逸らしたのも、私への愛情が溢れて抱きしめたくなったからだった。

私達はこの時お互いにすれ違い、真実を見抜くことが出来なかった。

元彼の事件以来、私は一人で外出を禁じられた。

「美希、買い物は休みに一緒に行くから、それ以外は一歩も外に出るな、いいな」

「わかりました」

そうは言ったものの、ずっと部屋に篭りきりの状態はストレスが溜まって来た。

彼は忙しく、あれ以来ベッドを共にしていない。

もちろん、抱きしめることも、キスすることもなくなった。

ただ変わったことは毎日電話をくれるようになった。

「美希、大丈夫か、変わりないか」

「大丈夫です、蓮さんこそ大丈夫ですか、いつもイスで寝ていますけど、睡眠不足なんじゃないですか」

「俺は大丈夫だ、心配はいらない」

「はい」

そのあと会話が切れて沈黙が続いた、私は思わず心の中の気持ちを口に出してしまった。

「蓮さん、私、蓮さんが好き」

「どうした?無理するな、じゃ切るぞ」

スマホが切れた。