彼はいつも優しい、私を思いっきり愛してくれるでも私が抱えている不安をどうやって伝えればいいか、もし嫌われたらどうしよう。

私が抱えている不安は十年前に遡る。

当時私は飛鷹コーポレーションの御曹司、飛鷹劉と付き合っていた。

私は綺麗だと言われたことはあるが、決して目立つ存在ではない。

大学の同級生である彼と、卒業後偶然バーで再会した。

「藤城?久しぶり、俺のこと覚えてるか」

「飛鷹くん?本当に久しぶりだね、卒業以来だよね」

久しぶりと言うこともあり、また大学の時密かに彼を目で追っていたほど、惹かれた存在だった。

彼は御曹司と言うこともあり、いつも女の子に囲まれていた。

地味な私はその輪の中に入れず、遠くから見守っていただけだった。

この時私は二十八歳、鏑木建設会社に勤務しており、寂しくお一人様の生活を送っていた。

彼は大学卒業後、父親の会社である飛鷹コーポレーションに就職し、次期社長の座が決まっていた。

「藤城、結婚は?」

「まだだよ、彼氏もいないんだから」