「鏑木、社長就任おめでとう、これでやっと俺と一緒のラインに立てたな」

「別に社長になりたかった訳じゃない」

東條さんに教えてもらったのだが、犬猿の仲なのか必ず衝突するらしい。

私は挨拶も含めて社長室にお茶を運んだ。

「紹介するよ、俺の秘書の藤城だ」

彼は早川社長に私を紹介した。

「はじめまして、鏑木の秘書の藤城と申します」

「ヘェ?美人だな、鏑木、お前には勿体無いよ」

そう言って席から立ち上がり、私に近づいて来たそして名刺を差し出した。

「早川と申します、今度お食事でもご一緒に如何ですか」

早川社長から名刺を差し出され、受け取ろうとすると、彼が二人の間に割って入ってきた。

「名刺は東條が管理している、藤城に渡す必要はない」

彼は不機嫌そうな表情だった。

「おい、秘書以上の関係を感じるが、俺の勘違いか」

「藤城は俺の命より大切な存在だ、指一本も触れることは許さない」

「わかったよ、でも俺とのデートを彼女が望んだとしたら?」

「絶対行かせない」