「あのう、社長、会長へのご挨拶なんて、私なんの準備もしていません」

「大丈夫、ちょっとドライブだから」

彼は嬉しそうに私を見つめた。

彼と海に出かけた、仕事中に海を見てるなんて罪悪感はあったが、彼と一緒にいることに幸せを感じていた。

「美希が東條と二人きりなんて、絶対我慢出来ねえ、美希は俺のものだからな」

えっ、東條さんに嫉妬してたの、信じられない。

「美希、俺のマンションに引っ越してこい」

彼の言葉にいい加減さは感じられない、でも彼との恋愛に踏み出す勇気はなかった。

その時彼のスマホが鳴った。

「社長、至急お戻りください、早川社長がお見えです」

東條さんからの電話だった。

「わかった」

彼はそう答えて、車を会社に走らせた。

「美希ごめんな、今度の休みまた出かけような」

「大丈夫です」

社に戻ると、早川社長が待っていた。

早川社長は彼の仕事仲間である、大学時代からの親友、いや悪友と言った方がいいかもしれない。