えっ私?なんで私だけ名前聞かれるの?不思議に思い、次の瞬間リストラが脳裏を掠めた。

「藤城美希です」

彼の口からどんな言葉が発せられるのか、ドキドキしながら待った。

「明日から俺の秘書な、よろしく」

えっどう言う事?秘書の経験無いんですけど……

社長命令は絶対だ、経験ある無しに関わらず、選択肢は一つ、やるしかない。

次の日から彼の秘書の仕事が始まった。

朝から洋服選びに手こずった。

秘書ってやっぱりスーツだよね、昔のスーツを引っ張り出し、鏡の前で悩んだ挙句、
淡いベージュのスーツを選んだ。

なるべく若く見えるようにと化粧も工夫した。

だって、社長は二十六歳の若きイケメン御曹司で、隣にいるのが冴えないアラフォー秘書じゃ滑稽だと自分に喝を入れた。

慣れないヒールを履き、背筋を伸ばし、鏡の前で笑顔の練習をした。

そういえば社長は誰かに似ている、記憶を呼び戻したが、全くわからない。