そんなある日、 病室に今村不動産ご令嬢の今村麗子さんがやってきた。

「はじめまして、私、鏑木建設会社と古くから付き合いがある、今村不動産の今村麗子と申します、本来は蓮様は私の婚約者だったんです」

婚約者、そうだったんだ。

「蓮様を返してくださらない事、あなたは蓮様に相応しくありませんことよ」

私は何も返す言葉が見つからなかった。

「まっ、いいわ、どうせ蓮様は私のものになるんだから、もうすぐ四十歳になるあなたと、二十三歳の私とでは、蓮様がどちらを選ぶか、勝敗は決まったも同然ですわね」

麗子さんは病室を後にした。

言われなくてもわかってる、ちゃんと見送ってあげないとね。

涙が溢れて止まらなかった。

そこへ望月さんがお見舞いに来てくれた。

泣いてる私を見て「どうかしたのか」と声をかけた。

「なんでもありません」

「なんでもない顔してないぞ」

「なんかいつも望月さんは泣いてるところに現れるんだから、誤魔化せないですね」