保健室の窓から差し込む、春の陽射しはぽかぽかと暖かい。その陽射しを全部浴びるような保健室のこの造りは、もう眠りを誘っているとしか思えなくらいだ。そして、本来なら授業を受けなければならない時間に一人、こうして別の場所にいるのも気持ちがよかった。お弁当を食べたばかりで満腹だったのも手伝ったか。一度まぶたを閉じてしまったらそのまま。まぶたを透過する光りに眩しさを覚える間もなく、真南(まな)は眠りへと落ちていってしまった。
 真南がなぜこうして保健室でくつろいでいるのかは、少し前。
 五時間目の授業中にさかのぼる。

 昼休みも終盤にさしかかり五時間目の授業の準備をしていると、早々と隣で着替えていた親友の吉永(よしなが)瑞希(みずき)が笑顔で耳うちしてきた。
「真南、今日の体育はバレーよ」
「マジ? あれって、レシーブしたら腕痛くなるからキライ」
 真南はジャージのジッパーを上げながら、いかにも嫌そうな顔と声で返す。それでも瑞希は、真南がどんな顔をしようがものともしない。軽くあしらうように、
「上手く受ければ痛くなんかないって」
 なんて言いながら、早く体育館へ行こうと真南の背中を押して急かした。