涙と雨でぐしゃぐしゃになりながらも、なんとかめぐさんの家に辿り着いた。玄関の扉を開けると、立夏さんがひゃっと短い悲鳴を上げた。

「だ、だ、大丈夫!?」
「お風呂たまってる?」
「もう入れるよ」

 めぐさんは早送りのようなスピードでお風呂場に行き、ぼくの服を脱がせ、湯船の中に放り込んだ。

「よくあったまるんだよ」

 そう言って自分も服を脱いで、シャワーを浴び始めた。ぼくは両膝を抱えてぐすんぐすんと鼻をすすった。どれだけ湯船に浸かっても、全然温まる気がしない。お湯を顔に浴びせても、涙はちっともごまかせない。腫れ上がった目蓋がひりひりと痛んだ。

 お風呂から出ると、めぐさんは温かいココアを用意してくれた。

「もう寒くない? 平気?」 

 力なく頷くと、めぐさんは心底ほっとしたように微笑んだ。ぼくたちはソファに腰掛けながら、電話が鳴るのを待った。神奈からの連絡を待つ間、何度も瞳が潤って、そのたびに唇を噛み締めて押し戻した。泣いたってどうにもならないことは分かっていた。心臓が、まるで大太鼓のようにドンドンと鳴っている。蒼葉のことを思えば思うほど大きくなる。小さな爆発が何度も起きる。そのたびに少しずつ、体の内側がぼろぼろになっていくような気がした。胃が、内臓が、肺が、壊されていく。

 早く会いたい。声が聞きたい。ぼくを安心させてほしい。祈るように目をつぶった。沈黙が首を絞めていく。

 どれだけ時間が経ったのか。雨が少し弱まった頃、突然部屋の電話が鳴った。

「もしもし、神奈?」

 めぐさんが電話に出る。どうやら、ひとまず容体は落ち着いたようだ。それでも安心することはできずに、ぼくはめぐさんと一緒に蒼葉の元へと急いだ。