車の助手席に乗り込んで、夜の世界を走った。生まれ育った町から遠ざかるにつれて、明かりがどんどん増えていった。地上に落ちた星のようなネオンを眺めながら、ぼくはくたっとシートにもたれた。

 これからどこに行くのだろう。どうなってしまうのだろう。何も分からないけど、不思議と不安は全くなかった。ぼくの心にあるのは、町を離れられる安堵感だけだった。

 現実から逃げるように目を閉じた。車の振動が心地いい。体中に安心がじんわりと染み込む。きっと次に目を開けた時には、全然知らない世界にいるんだ。寧々もテルもお姉ちゃんもいない、新しい場所に。

 ぼくはそのまま、深い眠りに落ちていった。