それから私達は、一年分の空白を埋めるかのように互いの近状を語り合った。

 何部に入ったか、どんな友人ができたか、同じ中学の誰々は元気にしているかなど、話題は次々と移り変わっていく。

 私はごろんとベッドに寝転んで、喉が枯れるまで穂乃花と話し、笑い合った。

「あーお腹痛い。久しぶりにこんなに笑った」

『私もー。皆本当に変わったよね。なんか、中学の頃が懐かしくなってくるよ』

「ねー。あ、そういえば、メッセージに書いてあった話したいことって?」

『……うん。そのことなんだけどさ』

 穂乃花の顔は見えないけれど、彼女の纏う空気が変わったのを感じた。私は体を起こして、穂乃花の言葉の続きを待つ。

『美夜に、助けてほしいの』

「え?」

『正確には、助けたい人がいるの。美夜に力を貸してもらいたくて……。あ、仲直りしたかった気持ちは本当だよ。さっきの謝罪も、嘘なんかじゃ――』

「わかってる」

 狼狽えた穂乃花の声を遮ると、「美夜……」と呟く声が聞こえた。

「穂乃花はそんなことしないって、わかってるから。大丈夫」

『……ありがとう』

「詳しく、聞いてもいい?」

 穂乃花との長い電話を切ったのは、日付が変わった後だった。

「通話終了」と表示されたスマホをベッドの脇に置いて、ふっと息をつく。

(……今度こそ、ちゃんと、穂乃花の力になれるのかな)

 突然、言い知れない不安に襲われる。

 もし、またあの時の二の舞になったら。

 両腕を抱いてそんな不安を振り払うべく、私に光を射してくれた勇気の出るおまじないを唱える。

「……時には情熱的に燃え上がる炎のように、時には可憐に散りゆく花びらのように。それは人が人を想い、愛す、魅惑の恋の色で」

(大丈夫。私の見る赤い世界は、ただ悪いだけのものではない)

 脳裏に倉吉先輩の笑顔が過ぎり、視線と口元が綻んだ。