暫しの沈黙の後、私はふるふると首を横に振る。

「そんな、悪いですよ。この前も相談に乗ってもらいましたし」

「一回も二回も大差ないって。それにミャオって、溜め込んだものを適度に吐き出さないと、創作できなくなるタイプだろ」

 ビシッと指を差され、自分のことなのに「確かにそうかもしれない」と納得してしまう。

 結局昼休みは時間がなくて、夏恵に全てを打ち明けることはできなかった。このままずるずると一人で引きずっていくよりは、ここで倉吉先輩に話を聞いてもらうのもありかもしれない。

 それに――倉吉先輩に判断を委ねるわけではないが、もし倉吉先輩が私の立場だったらどんな選択をするのか。少し、聞いてみたい気持ちもあった。

 私はぎこちなく笑いながら、シャーペンを置いて倉吉先輩と向き合う。

「それじゃあ……聞いてもらっても、いいですか?」

「おう。倉吉先生と言祝先生、どっちをご所望で?」

「そうですね。大好きな言祝先生に情けないところは見られたくないので、倉吉先生でお願いします」

「まいど~」

 倉吉先輩の冗談で、なんとなく話を切り出しやすい雰囲気が構築される。私は何から話すか頭の中で整理し、すっと息を吸い込んで、赤いマフラーのことだけは伏せた過去を淡々と語り始めた。

 恋心に振り回されて苦しむ友人の顔を見ていられなかったこと。嘘で背中を押した結果、友人はフラれ、私は「嘘つき」と罵られたこと。そのまま疎遠になり、今日久方ぶりに連絡が来たこと。

 話の途中、自分のせいで重苦しくなった空気を和らげようと、私は過去の自分を自嘲して笑う。けれど、倉吉先輩はそんな私を指摘することなく「それで?」と優しく話の続きを促してくれた。何故だか同情の言葉をかけられるよりも、自然にそう聞き流してくれる方がありがたく感じて、何度も涙が零れそうになる。

 全てを話し終えると、それだけで先程よりも随分と楽になり、私は背もたれに寄り掛かって脱力した。

「なるほどな。その友人のためを思って行動したことが、逆に仇になったってわけか」

 神妙な顔で私の話を聞いていた倉吉先輩は、話の全貌を噛み砕いて呟く。視線をやや下に下げてまるで自分のことのように考えてくれる彼を一瞥し、私は小さな声で問いかける。

「もし、倉吉先輩が私の立場だったら、どうしますか?」

「電話する」

 即座に撃ち返された、単純で迷いのない答え。

 開いた口が塞がらず、なんて言葉を返せばいいのかわからずにいる私に向けて、倉吉先輩はふっと微笑みながら言った。

「もちろん、そいつとはもう絶交だとか、二度と口を聞きたくないって思ってるなら、話は別だけどな。でも俺はミャオの話を聞いて、その友人をそこまで最低な奴だとは思えなかった。今ミャオが不安を感じてるように、その友人もきっと同じだけの不安を抱えて、ミャオにメッセージを送ったはずだから」

 はっと息を呑んで、倉吉先輩を見つめる。