夢だ。
 さっきとは違う、やけにはっきりとした夢。月野ちゃんの温もりを感じている分、リアリティが増しているのかな。
『は、初めまして、内村奈緒です!』
 高校二年生、親の仕事の都合で全く知らない土地の学校への転校。不安でいっぱいだった私。
『奈緒さん、東京から来たんだって!』
 そんな私に、最初に声をかけてくれたのが陽子ちゃんだった。
『う、うん』
『東京ってどんな場所? 奈緒ちゃんお洒落だよね、みんなそうなの?』
『え、えっと』
 気の弱い私は、勢いに圧倒されていたな。
『あー、目を付けられたね。陽子ちゃんは一度気に入ったものは絶対に逃さないよ』
 月野ちゃんはそう言いながら、さりげなく私を助けてくれたっけ。
 その後、色々あったけど。私たち三人は友達になった。月野ちゃんと私は少しぎこちない時期もあったけど、あっという間に仲良くなって。
 はつらつとした二人に比べて大人しい私だけど、共に過ごす時間は自然で、かつてないほどに楽しくて。たった一年、一緒に居ただけの友達だったのに。二人はそれまで付き合ったどんな相手よりも、心の深い部分に入り込んできた。
 三人で遊びに行った。地元の海、教室や誰かの家、近所の公園のベンチ、地元に一軒しかないファストフード店、話しているだけでも楽しくて。陽子ちゃんの実家のお菓子屋さんを手伝ったり、月野ちゃんの水泳の大会に陽子ちゃんと応援へ行ったり、逆に私のピアノのコンクールに二人が応援に来てくれたこともあった。一年間、いつも一緒だった。どんなときでも三人でいた。
 高校二年生という、普通より遅い出会いだったのに。私たちはその時間は永遠だと、信じ切っていた。