もっと自分が有名になれば劇場へ身に来てくれるのだろうか。それとも、当に自分のことなど忘れて新しい人生を送っているかもしれない。誰だって、勤め先でたまに話すだけの相手に興味なんて抱かないだろう。商売が上手い人間なら尚更だ。パンがよく売れて、常連客になってくれるならそれでいい。それ以上の干渉は不要、だって仕事に関係ないのだから。
「インゴット・フォレスト」
 自分のフルネームを、初めてリックに言えた気がした。