「はい」

私は海堂さんが既にサイン済みの離婚届けにサインした。

これでいいんだ、誰にも迷惑をかけないように生きて行かないと……

「スマホはこれをつかえ、まだ俺の名前で契約してあるが、離婚届け提出したら名義変更すればいい」

「わかりました」

なんか、海堂さん、淡々と事を済ませるんだと、ちょっと寂しい気持ちになった。

そんな矢先、充が病院へやって来た。

「ちづる、大丈夫か」

「充、大丈夫よ」

「八年前、なんで言ってくれなかったんだ、黙って姿をくらますなんて」

充は動揺を隠せない様子だった。

私が不安なのに、もし、私が命に関わる病気だったら、充は私の前で平常心を装う事は出来ないだろう。

海堂さんなら、見事に平常心を装う事が出来るだろう。

もしかして、私、命に関わる病気なの?

腫瘍は悪性で、既に手遅れって事?

急に心配になって来た、だって離婚もなんの問題もなく受けてくれたし、もう私見捨てられたの?

そこへ海堂さんがやって来た。

「おお、充、早かったな」