「まだ、日本にいるのか?」

「当たり前だ、ちづるを奪い返すまで俺は諦めない」

「そうか、ちづるが入院した」

「えっ?」

充は電話口の向こうで驚きの声をあげた。

「どこが悪いんだ、命に別状はないんだろうな」

「検査をしないとわからない」

「慎、ちづるの側にいながら体調の変化に気づかなかったのか」

「すまん」

「どこの病院だ」

「その前に、八年前、ちづるが子宮筋腫に侵されていた事を知っていたか」

「子宮筋腫?」

充は心当たりのない様子だった。

「お前の前から姿を消したあと、一人で子宮全摘出手術を受けたらしい」

「まさか、そんな事があったなんて、全く知らなかった」

「ちづるの気持ちを考えて、どうすればいいのかわかってくれ」

「慎、お前だって俺と立場は同じだろ?」

「海堂コーポレーションはお前の会社ほど大きくない、それに俺達は契約結婚だからな、ちづるも軽く考えていたんだろう」

「そうじゃなくて、後継者いないと困るだろう、まさかちづるを見捨てる気か」