海堂さんは目を細めて充を睨んだ。

そして私には呆れた表情で言葉を発した。

「ちづる、何故充を部屋に入れたんだ」

「それは……」

私は言い訳出来ないまま俯いた。

「充、出て行け」

「わかった」

そう言って充は私の肩を抱いてドアの方へ向かった。

えっ?私このまま連れて行かれるの?

海堂さんは止めてくれないの?

視線を海堂さんに向けたまま、充に腕を引っ張られた。

私はもうここにはいられないと諦めた瞬間「ちづるを連れて行っていいと誰が言った」と海堂さんが私の腕を引き寄せた。

そして、海堂さんの背中に回された。

私は海堂さんの背中に頬をつけて涙が溢れてくるのを堪えきれずにいた。

俺は背中でちづるが小刻みに震えて、涙している事を感じた。

充は黙ってマンションを後にした。

俺はちづるの方へ向き直り、頬の涙を拭った。

ちづるは涙が止まらず、俺の胸に顔を埋めた。

俺もギュッとちづるを抱きしめた。