「でも、海堂さんは私を抱きしめてくれたの」

「ちづる、どうして奴に抱かれたんだ、慎は……」

「充、もう帰って、私、海堂さんに着いて行くから」

ドアの向こうで充は黙っていた。

しばらくして充の苦しそうな声が聞こえて来た。

「充、どうしたの?」

「ちづる、急に頭痛が、薬あるか?」

充は昔から頭痛で悩まされており、すぐに薬を服用しないと割れる様な痛みが襲ってくる。

「今、開けるから」

私は充の策略とは知らず、ドアを開けてしまった。

「充、大丈夫?」

「やっぱり、ちづるは俺を愛してくれているんだな」

「頭痛は嘘なの?私を騙したのね」

充は部屋に入るなり、私を抱きしめた。

「いや、離して!」

「奴に抱かれるんじゃない、俺が抱いてやる」

「充、やめて」

その時、ガチャっとドアが開く音がした。

そこに立っていたのは海堂さんだった。

「充、どう言う事だ、俺の留守に上がり込むとは」

「ちづるは俺の女だ」

そう言って充は私の腰を引き寄せた。