「知ってる、さっき山川に挨拶してただろう」

あっ、そうだった。

「とにかく、今日はここに泊まれ、ゲストルームは鍵がかかるから、それならいいだろう」

私は何も言い返せずお世話になることになってしまった。

なんか落ち着かない、まずなんで私が襲われたの?

あのマンションを見上げていた男は何者なの?

海堂さんはどうしてこんなに親切にしてくれるの?

ちょっと自分勝手すぎるけど……

そんな事を考えていると、ドアがノックされた。

「はい」

「まだ、寝てないか?」

「寝ていません」

「ちょっとつきあえ」

ドアを開けると、海堂さんはお酒を呑んでいた。

「冷蔵庫になんかあるだろう、つまみを作れ」

私は冷蔵庫を開けて酒のつまみを作った。
料理は得意で、文句を言われたり、まずいと言われたことはない。

案の定海堂さんは「へえ、驚いたな、人間一つは取り柄があるもんだな」と憎まれ口を言ったが、笑顔で全て平らげた。

「美味しかったですか」

「まあまあだな」