あの酔った勢いで言った言葉は、俺に対してじゃなく、当時充に対して言った言葉だったのか。

結婚を約束した相手なら経験がないわけがない。

俺だけが知らずに、自分がファーストキスの相手ではじめての相手などと浮かれていたのか。

二週間前にこの部屋でお互いの誤解を解いて、愛し合ったのか。

全てがよからぬ妄想で、俺の頭の中はごちゃごちゃになった。

過去の彼女の裏切りが走馬灯の様に蘇った。

俺は愛する女に一度成らず二度までも裏切られたのか。

「慎、ちづるを返してくれ」

「なんだと」

「ちづるは俺を愛している、自分を愛していない女と一緒にいても仕方ないだろう」

「ちづるは渡さない」

「俺との関係をお前に黙っていたのは何故だと思う?俺が訪ねて来た事を聞いてなかったんだろう?ちづるの気持ちを考えてやれ」

充は電話を切った。
嘘だろ?

ちづるも俺を裏切るのかよ。

俺はすっかり自信を無くした、

自殺した彼女が、俺の新たな恋愛を許さないって事なのか。