俺はちづるに微笑みかけて、マンションを後にした。

充が帰った後、私は呆然と立ち尽くした。

あの時、充を信じて待っていたら、私は充と人生を歩むことが出来たのだろうか。

でも私は海堂ちづるなんだ。

たとえ、海堂さんが私を愛していなくとも、私は海堂慎が好き。

その夜、海堂さんが仕事から戻ると、急に私を抱きしめた。

「海堂さん、どうされたのですか」

「充は、ちづるを狙ってる」

「そんな事はありません」

「あいつの目は本気だった」

「考え過ぎですよ、私は海堂ちづるなんですよね」

「当たり前だ」

「それなら何も問題ありません、あっ!」

「なんだ、どうしたんだ、急に」

「私が書いた、正確には書かされた離婚届けは処分して頂けましたか?」

「無論破り捨てた、この世に存在しない」

「それなら、海堂さんが私をギュッとしてくれていたら、私はずっと海堂ちづるです」

海堂さんは私を引き寄せギュッとした。

「きゃっ、何するんですか」

「ちづるをギュッとしたんだ」