「一人で帰ること出来ます」

「お前さあ、誰かに狙われてるのか?」

「えっ?」

「アパートからずっとつけてくる怪しい車に気づかなかったのか」

窓から恐る恐る覗くと、黒い車から一人の男性がマンションを見上げていた。

誰だろう、全く心当たりがない。

「セキュリティがないも同然のアパートに置いておける訳ないだろう」

「でも……」

「とにかくしばらくここにいろ、それから仕事辞めてここで働け」

「そんな急に無理です、それにあなたが誰だかわからないのに泊まるなんて出来ません」

「じゃ、オオカミに襲われちまえ」

ひどい、そんな言い方しなくても、この男性になんでそこまで言われないといけないの?

確かに助けて貰ったけど、ここまでしてもらう理由がわからないよ。

「俺は海堂コーポレーション社長、海堂慎だ」

そう言って私に名刺を差し出した。

海堂コーポレーション社長、こんな社長についていかないといけない社員は大変だろうなと感じた。

「私は間宮ちづるです」