「ちづるがこの先、困ったことがあったら、すぐに俺に連絡しろ、どこにいても駆けつけるからな、わかったか」

「はい、ありがとうございます」

仙道さんの笑顔に不覚にもドキッとしてしまった。

そんな私の気持ちを読み取ったのか、不意に腕を掴まれて、仙道さんの顔が急接近した。

あと、数センチと唇が近づいて、私は我に返った。

仙道さんの胸に手を押し当てて、離れた。

「恋人は振って、俺にしろ、ちづる」

仙道さんにギュッと抱きしめられて、抵抗することが出来なかった。

俺はちづるに惚れた。

他の男に渡したくなかった。

ちづるの男はどんな奴なんだ、他の男のマンションに泊まる事を許すなんて信じられない。

俺ならすぐに迎えに行くとこの時は自分の気持ちは変わらないと疑わなかった。

しかし、ちづるが困っていた時に仕事を優先してしまったことが、ちづるとの別れになってしまうなど、誰が予想出来ただろうか。

そう、あの時、俺はちづるの気持ちを確かめないまま、強引にデートに誘っていた。