「相手の幸せを願って身を引くってお前らしくねえよ」

「おい、随分な言い方してくれるじゃねえか」

「それで、俺は何をすればいいんだ」

「三神の息のかかっていない相手と会社立て直しのために取引したい」

充は電話口でしばらく沈黙になった。

「俺と仕事するか?」

「えっ?充と?」

「不満かよ」

「いや、願ったり叶ったりだが、お前の会社に迷惑かからないのか」

「会社じゃなく、俺が慎に投資するから、慎は自分で取引先を探せ」

「恩にきるよ」

「何社か紹介するからあとは自分でなんとかしろ」

「必ず金は返す」

「当たり前だ、もしダメだったらちづるさんを貰う」

「絶対に渡さねえ」

「その息だ」

充はデーターを送ってくれた。

資金も送金してくれた。

俺は充の紹介してくれた会社をあたり、海堂コーポレーションを立て直すための戦略を練った。

慎と電話を切ったあと、俺はある女を思い返していた。

慎と結婚したちづるさん、俺が八年前愛した女もちづると言う名前だった。