「その三神亘の息子がちづるに惚れて、三神がちづるを屋敷に監禁した」

「立派な犯罪じゃないか、警察に言えよ」

「それが、三神の屋敷にいるのはちづるの意思なんだ」

「どう言う事だ」

「海堂コーポレーションはメインバンクと取引先から撤退されそうだ」

「三神の仕業ってことか」

「ああ」

充は頭の回転がいい男だ、俺が説明しなくとも全てを理解した。

「ちづるさんは、慎と会社の為に自分を犠牲にする女なのか」

「そうだ」

「実は俺とちづるは契約結婚なんだ」

「えっ?」

充は驚きを隠せない様子だった。

「俺は初めてちづると会った時から放っておけないと感じて、でもちづるに惚れたんだと気づくまで時間がかかった」

「ちづるさんはお前に初めから好意を抱いてくれていたのか?」

「いや、今でも本当の気持ちはわからない」

「はあ?」

「俺がそう思い込んでいるだけなのかもしれない」

「いいんじゃねえの、慎が惚れてんのなら奪っちゃえよ」

「そうだよな」