俺がサインしなければ離婚は成立しない。

三神の息子とも結婚は出来ない、でも力ずくで自分のものにしようとしたら……

俺は悠長に構えてはいられなかった。

なんとかちづると話せる機会はないだろうか。

ちづるのスマホは俺のマンションに置きっぱなしだった。

俺は秘書に探偵を使って、ちづるの様子を探るように命じた。

ちづるは三神の屋敷に閉じ込められているようだが、大切に扱って貰っているみたいだと報告があった。

俺は三神の屋敷の近辺まで様子を伺いに行った。

二階の窓から外を見ているちづるの姿を捉えた。

あの部屋か。

俺は思わず「ちづる!」と叫んだ、しかし俺の声はちづるには届かなかった。

次の日も俺はちづるのいる部屋の窓を見つめていた。

カーテン越しにちづるの姿が俺の目に止まった。

道に落ちていた石ころをちづるのいる部屋の窓ガラスに投げつけた。

石ころは窓ガラスにコンっと当たった。

ちづるはカーテンを開けて窓ガラスの外を見た。

この時ちづるは俺に気づいてじっと見つめた。