三神さんが執事に指示を出す間もなく、廊下が騒がしくなり、海堂さんがいきなりドアを開けて入って来た。

「ちづる、どこだ」

「海堂さん」

海堂さんはいきなり私を引き寄せ抱きしめた。

「大丈夫だったか、心配したぞ」

「挨拶もなしにいきなり失礼じゃないか」

「どっちが失礼だよ、俺の妻を誘拐しやがってどう言うつもりだ」

三神さんに罵声を浴びさせながら、海堂さんは私を自分の背に匿う形にした。

「ちづる、帰るぞ」

そう言って私の腕を掴み、ドアの方へ向かった。

「君はちづるさんを幸せに出来るのか?」

三神さんは海堂さんの背中に言葉を投げかけた。

海堂さんはちょっと表情を変えた。

「どう言う事だ」

「失礼ながら君のことを調べさせて貰った、彼女一人も守れないでちづるさんを守れるのかね」

海堂さんはちらっと私を見た、目が合って私は戸惑った。

「君の彼女だった人は自殺したそうだね」

「過去の事だ」