「一緒に食うよ、先に食べるなんて駄目だ」

「はいはい、わかりました」

「はいは一回でいい」

「はいはい」

こいつ、俺をバカにしてるのか、全く、調子狂うな。

そう言えば海堂さんの事何にも知らなかった。

あなたの過去に何があったの?

黙々と箸を進める海堂さんに私は思い切って聞いてみた。

「あんな思いって何があったんですか」

海堂さんは私の言葉に箸を止めてゆっくり私を見た。

「くだらない事言ってねえで、さっさと食え」

「はい」

海堂さんは教えてはくれなかった。

次の日俺はちづるをつけ回していた連中の身元を知り愕然となった。

世界に進出している宝石のデザイナー三神亘の息子三神学だった。

この息子は親の脛をかじって全く働かず、遊び呆けているどうしようも無い息子だと悪い噂が絶えないのである。

「なんでそんな奴がちづるをつけ回しているんだ」

「一目惚れをして自分のものにしたいと、チャンスを狙っているようです」

「はあ?なんて奴だ、絶対にちづるは渡さねえ」