でも、海堂さんとはあくまで契約上の関係だから、これ以上近づいてはいけないと自分に言い聞かせた。

絶対に彼女がいるに決まってる、いつかは訪れるであろう海堂さんとの別れ。

それを思うと、涙が溢れてくる。

いつのまにか、私は海堂さんに惹かれていた。

でも、そんな気持ちに気づけないでいた。

ある日、夕食の支度をしていると、塩を切らしていたことに気づいた。

海堂さんは必要なものはコンシェルジュの山川さんに頼めと言っていたが、塩だけ買ってきてもらう訳にはいかない。

私は山川さんのいない隙にコンビニに出かけた。

すぐ戻るからと海堂さんには連絡しないでマンションを出た。

海堂さんが帰ってくるまで戻るつもりでいたのである。

俺は偶々仕事が早く終わったので、ちづるの待つマンションへ急いだ。

「ただいま、ちづる?ちづる?」

ちづるの返事はない。

俺はコンシェルジュの山川に確認しに下へ降りた。

「ちづるは出かけたのか?」