「社長に就任して早く結婚しろって役員がうるさくて仕方ねえ」

「そうなんですか」

「本当に彼女さんはいないんですか」

「ああ、ずっと一緒に居たいと思える女はいなかったからな」

そして、二人でちづるのアパートへ向かった。

荷物を整理して、アパートの解約の手続きを進めた。

食事をして帰る事にした。

「ちづるは食べられないものとかあるか」

「私はなんでも食べられます、海堂さんは?」

「俺はピーマンと玉ねぎが駄目だから食事のメニュー頼むぞ」

「子供みたいですね」

「うるせえ、あんなの食いもんじゃねえ」

ちづるはやっと笑顔になった。

マンションに戻ると、ちづるの荷物は届いていた。

「あのう、やっぱり婚姻届は出さない方がいいと思います」

「どうしてだ」

「海堂さんが結婚したい女性に巡り会った時、離婚歴が付いちゃいますよ」

俺はこの時、ちづるは俺の事をなんとも思っていないんだと確信した。

それに引き換え俺はちづるが心配で仕方ない。