「車のナンバーを頭に入れたから、ちづるに何が起こってるのかしらべてやる、だからそれまでここから一歩も出るな、必要なものは山川に頼べば用意してくれる、どうしても出かける用事があるなら、俺が一緒に行ってやるから、俺の言う通りにしろ、いいな」
ちづるはコクリと頷いた。

俺は婚姻届をちづるの目の前に差し出し、サインする様に促した。

ちづるは涙を拭いながら婚姻届にサインをした。

「明日、役所に提出してくる、今日は日曜だから一緒に出かけるか」

「はい」

「そうだ、ちづるの荷物をアパートに取りに行こう、そしてもう解約しよう、ちづるはずっとここで暮らすんだからな」

「海堂さんはどうして私にこれほどまでに優しくしてくれるんですか」

「優しくか、別に優しくしているわけではない、互いの利害関係が一致しただけだ」

「利害関係?」

「俺は結婚相手を探している、ちづるは危険を回避したいとお互いに結婚すれば、好都合だろ」

「好都合?」

ちづるは理解出来ていない様子だった。