〈材質不明の石〉



正体は分からないけれど、幻術などに惑わされているわけではないようだ。奇妙なことだが、この階段は本物の階段だ。

「こういう場所だ。すべてが狂っている」

フェリスが呟いた。

「マッピングに骨が折れそうだな」

俺はノートに現在位置と階段を書き込んだ。

階段を昇ると、広い吹き抜けがあった。やはり外部から見た構造と一致しない。俺たちは吹き抜けにそった廊下を進み、狭い道に入った。これも、長く、長く続く。

「待ってくださいまし!」

突然フウカが叫んだ。

「どうした」

「あの……何かを、踏みましたわ……」

フウカの足下を見ると、床が四角く凹んでいた。



――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



遠くから何かの音が聞こえてくる。

「逃げろ!」

俺たちは、今来た道を一目散に駆け出した。その背後から迫ってくるのは、怒濤の水流だ。

「急げ!」

廊下の先は巨大な吹き抜け。つまり水流に押し流されれば、そのまま落下することになる。そうなれば命は――しかし、間に合わない。

「くっ!!」

とうとう、俺たちは急流に飲み込まれた。溺れそうになりながらも、懸命にもがく。しかし水の勢いには抗えず、とうとう廊下から放り出された。吹き抜けの暗闇。しかし――。



【天衣無縫】



俺たち全員が、空中でふわりと停止した。

「みんな~大丈夫~?」