「……狂った正義感ってやつかねぇ」

自宅のベットで、今日のことを思い出す。……あいつは、あんなやつだっただろうか。

少なくとも昔は、もう少しまともだった気がする。今の昭彦は狂っている。

「…………春夏、か」

一人……幽霊や死神も合わせると三人だけの空間で、そんなことを呟いた。

今日含めないであと4日。……これからどうしようか。

昭彦に弱みらしい弱みはない。あいつの性格は俺もよく知っている。クソ真面目なんだ、あいつ。

そんなあいつがなんていじめをしているのか検討もつかない。……先生らが俺へのイジメに対してなにも言ってこないのもあいつの仕業だろうな。

春夏はそういうタイプではない。春夏は……なんて言うんだろうな。根が優しいともまた違うような。でも少なくとも昭彦のようなクズでもない。

「……面倒くさいな」

「自分へのイジメをバラすぞ……ってのはダメなの?」

さっきから部屋の隅で黙っていた死神が急に話しかけてくる。暇そうだな。

「ダメだろ、直接的な暴力はふるわれてないし仮に出来たとしても停学とかが関の山。イジメがもっと酷くなる未来しか見えない」

多分、脅しにもならないだろうな。開き直られて終わりだ。

「そういうもんか……」

「そういうもんだ。……あー疲れるな」

明日と明後日、俺が死ぬときのことまで考えると休む暇なんてない。やり残したことは出来るだけないようにしなきゃいけないのだ。

多少本などが散らかっている部屋で、俺が手に取ったのは綺麗な白色の分厚い……卒業アルバムだ。小学校のときの。

懐かしい。本当に懐かしい。
今思えば、小学校のときが一番幸せだった。好きな子がいて、仲の良い友達もいて。

――昭彦とも友達だった。

窓の外の景色が、真っ黒に染まっていく。まるでインクをぶちまけたような暗闇に。

俺はただ、孤独を感じていた。
星明かりのない空に。月だけが白く、辺りを照らしていた。