「おはよう!」

学校への道をつまんなそうに歩いている俺の背後から、朝からテンションの高い死神の声が聞こえてくる。

「おはよー」 

朝からうるさいやつだ。
だが、少し楽しいのも事実。幼なじみがいたならこんな感じなのかなと想像してみる。

「さーて、君の学校での姿を見せて貰えるかな?」

「……見てもあんま楽しいものではないぞ?」

というかなんでこいつはついてくるんだ。分からん。

「いいのいいの」

そういって彼女は屈託のない笑顔で笑った。妙に懐かしい感じがする。

普段は特になんとも思わなかった景色。彼女がいるだけで綺麗に見える。

……あぁ懐かしい。どうしようもなく。ただ喋りながら歩くこの朝が。ただ笑い合えるこの朝が。



「……な?面白くないだろ?」

俺は周りの生徒たちに気付かれないよう小声で死神に声をかける。

もしも人の生に幸福の絶対値なんてものがあるなら、俺はこの1週間幸せの絶頂にでもいないと割に合わないと思う。

「…………そうだね」

俺の机に書いてあるラクガキ。俺を見る他のヤツらの目。たまに飛んでくるクシャクシャに丸まったプリント。てか鼻水拭いたやつ投げてくんのやめろ汚ぇ。

「なんでこうなったのかね~」

それは自然に出た言葉だった。何を諦めた訳でもなく、別に現状。虐められているのが辛いわけでもない。

ただなんで。それだけの疑問だ。

毎日考えるこの疑問。ただいつもと違うのは返ってくる返事があることだけだ。

「……人間の考えてることはいまいち分かんないや」

「だろ?俺も分かんない。仲間だ、結婚しよう」

「ごめん無理」

即答だった。