「はい、というわけで貴方の人生は後1週間で終わりでーす!ワーイ、パチパチパチパチ~」

薄暗い、窓の外から射してる月明かりだけが光源の部屋の中。妙に高いテンションの女が俺に向かって手を叩いていた。

「……ぜんぜん喜ばしいことではないけどな」

つい、思ったことを口にすると女はきょとんとしたのうな顔になる。関わりたくないから見えないふりでもしようと思ったんだが。

「え、じゃあ悲しめばいいの?」

「えー……いやまぁ、うん」

「そう? じゃぁ…………なんか、その……ご愁傷様で……う、うぅぅ」

わざとらしい演技。
さっきからなんなんだこいつは。

「無理に悲しむ演技しなくていいから。てかお前誰?」

「誰って……格好で分からない?死神だよ死神。ほら、鎌もちゃんとあるよ?」

鎌、彼女が「ほら」と見せてきたものはあまりに小さかった。
そこら辺の雑貨屋にも売ってそうな、本当に小さい草刈り鎌。イメージとはぜんぜん違う。なんというか、背丈ぐらいの大きさをもってるイメージだった。

「……え、マジで?」

「マジです」

「あー……うん、まぁ信じるわ。今普通に壁すり抜けてるし」

「なんなら私に触れてみます?触れられませんけど」

そんなことを自信まんまんに言うので、俺は彼女の手に触れようとした、次の瞬間。
僕の手は壁に触れていた。

「うっわ本当だ」

「それにしても君ぜんぜん驚かないねー。私を見ただいたいの人間が悲鳴あげたり酷い人だと失禁とかしてるのに」

そりゃそうだろう。突然こんなわけのわからない奴が自分の部屋に来たら誰だって驚く。まぁ失禁はしないたろうけど。

「……まぁ、昔から幽霊とか結構見てきたし」

だが、俺は昔からこういうのには慣れていた。自分の家に知らない人がいるなんて日常茶飯事で、今回も特に驚くポイントはない。

寿命が1週間だかなんだかとか言ってたが、まぁ現実味がなさすぎる。

「お~霊感少年!いいね~どんなのが見えてたの?」

「……ジジイにババア。それとたまに犬猫がいた」

「ほへ~いいなー」

「いいなーって……お前霊見えないの?」

「見えない」

即答だった。
それが何か?という顔でこちらを見つめてくる。

「おいおい……死神がそれでいいのか?迷える魂を導くとかそういう役職だろ死神って」

「私は生きてる奴専門だからね~そういう風に作られてるのさ」

生きている奴専門?
作られている?

……だいたいの意味が分かってしまうのが怖いな。

「へー」

「まーだから霊が見える君みたいな人間が羨ましいとか思えちゃうよ」

そういって死神と名乗る女は微笑む。
羨ましい、か。別にいいものではないんだけどな。

「…………なぁ、俺の死因ってなんだったの?」

今、俺の体はいたって健康。運動だってちゃんとしてる。癌とかも多分ないだろう。つまり病気関連ではない。

こいつの言うことを100%信用しているわけではないが、話を聞くぐらいならいいだろう。

「んー、車」

車。なるほど。俺は車に轢かれるのか。

「あぁ……なるほど」

「結構つまんない終わり方だよねー」

つまんない終わり方。
確かに霊が見えるなんて特殊な力を持ってる人の最後がこんなのではつまらないかもな。

「そうだな……これからどうしよう」

「てきとーに過ごせばいいんじゃない?後1週間なんだしなんも出来ることないでしょ」

確かに。1週間なんてなんもできない。……何かやらないには暇すぎるし何かやるには短すぎる。

一年前とかに来てくれればもうちょっと何かあったのかな。

「……とりあえず今日は寝るわ」 

「ほーい、じゃ私は明日の朝にまた来るわ。じゃあね」