「なんかって言うか。あたし、昌也と別れるかも」
「は?」
みなみの言葉がにわかに信じられなかった。だって、みなみと彼氏の門倉はいつもすごく仲がいい。今朝だって一緒に登校しているところを見かけたし、ふたりの関係は順調そうだった。それなのに、どうして……。
「昌也ね、最近あたしのこと好きかどうかよくわからなくなったんだって。話も合うし一緒にいて楽しいけど、それが恋愛感情なのか最近わかんないって。だから、一緒にいる時間を少し減らしたいって言われた」
ハハッと笑うみなみの頬は引き攣っていて。みなみが門倉の言い分に納得してないんだってことも、あいつのことが好きなんだってこともはっきりと伝わってくる。
「みなみは、それに何て言ったの?」
「最初は嫌だって言ったよ。昌也の態度だって今朝まで普通だったから、半分冗談なのかなって。でも、話してるうちに本気だって気が付いて……。そうしたら、わかったって言うしかなかった」
「……そうか」
みなみの話を聞きながら、もしかしてこれはチャンスなのかなって一瞬思った。
門倉のことを相談されたってことは、おれも多少はみなみに頼りにされてるんだろう。弱ってるところに付け込むのは卑怯かもしれないけど、今おれが長年募らせてきたみなみへの想いを伝えたらもしかしたら……。
みなみの横顔をじっと見つめて考えていると、彼女がおれのほうを振り向いて哀しそうに笑いかけてくる。
「やっぱり、アイちゃんにしとけばよかったのかな……」
「……、え?」
「アイちゃんて、ほんとうはあたしのこと好きでしょ」
ドキッとした。顔を強張らせるおれを見て、みなみがふっと目を細める。