ぼんやり見ていると、サッカー部の部員のひとりが練習を抜けてマネージャーのほうに歩いていく。見たことのあるやつだなと思ったら、同じクラスの弓岡だった。

二年生の女子マネージャーと何か話したあと、弓岡が南の前で足を止めて、ショートボブになった頭に手をのせる。頭を撫でてきた弓岡に笑い返している南は、案外元気そうだった。

ピクリと片側の頬が引き攣る。

おれと別れて落ち込んでるかもなんて、どうしてそんな自惚れた考えが頭に浮かんだんだろう。おれがいなくても南は充分に楽しそうだ。

女子のほうが切り替えが早いって聞いたことあるけど、南はもうおれのことは忘れて、新しい恋を始めているのかもしれない。たとえば弓岡に、とか。

別れを告げられたことになんの感傷も未練もないはずだった。おれは南のことが好きで付き合っていたわけじゃないから。それなのに彼女の気持ちが他へ向きかけると少し複雑な気持ちになるなんて、自分でも呆れる。