河川敷まで続く片側一車線の道路は車通りが多くて、狭い歩道との間がガードレールで仕切られている。
目的地に向かって黙々と歩く梁井先輩とわたしを、同じように河川敷へと向かう人たちが何組も抜いて行く。そのなかには浴衣を着た女の子たちがいて。わたし達のそばで浴衣の袖が揺れるたび、梁井先輩は通り過ぎて行く女の子に視線を向けていた。
わたしの浴衣には目もくれなかったくせに、通りすがりの浴衣の女の子には反応するんだ……。
悔しく思いながら通りすがりの女の子たちを横目で睨む。そうしているうちに、梁井先輩が反応する、ある法則性に気付いてしまった。
梁井先輩が視線を動かすのは、水色の浴衣の子がそばを通るときだけなのだ。きっと梁井先輩は無意識に、水色の浴衣を着たみなみ先輩を探してる――。
もう、ダメだ……。
着崩れないようにと、お母さんにきつめに締められた帯の上から左胸の下を押さえる。帯のせいではないとわかっているけれど、胸がざらついて息苦しくて。今すぐに、胸を圧迫するものを引っ張って取り除いてしまいたくなった。
「梁井先輩……」
少し前を歩く梁井先輩の腕に手を伸ばす。けれど、わたしの掠れた声や伸ばした指先は彼には届かず、車の走行音と周囲の人の話し声にかき消されて溶けていく。
胸に迫る圧迫感でわたしが立ち止まっても、梁井先輩は気付かずに、ひとりでどんどん先に進んでいってしまう。