瞬のいない世界に私の幸せなんてない。
あれから1年、毎日瞬の後を追うことだけを考えた。
 それなのに、何故か毎回失敗に終わる。
 始めは首を吊ろうとしたが、紐が切れた。紐は新品だったのに。
 
 次に刃物で手首を切ろうとしたけど、刃物が見当たらなかった。お風呂場のカミソリも台所の包丁もハサミさえ見当たらなかった。
 
 3度目の正直に期待して、服毒しようとしたこともあった。何故か薬の中身が空だった。
 
 その後も色々と試してはみたけれど全て失敗に終わった。
 
 全て偶然?それとも、瞬が来るなって言っているの? 私は瞬の元に逝きたいよ……。
 
 「おはよう、茜チャン。もうすっかり夕方だよ。」
  静かな教室に夕日が差し込む中、シオンの声で起こされた。
 目覚めは最悪だがよく眠れた。夢を見た。とても幸せな夢だった気がする。
 
 「いくらなんでも寝すぎだよ」
シオンが呆れた様子で言ってくる。
 しかし、登校してから今ままでというのは寝すぎだとは思う。前は不眠症だったのに、シオンが来てからというもの眠くて仕方がない。
 
 「シオン、あんた私に何かした?」
 ふと気になって聞いてみた。 
 私の上を浮遊していたシオンの動きが止まった。
 「何もしていないよ?ただ、死神が見えるのはあまり良いことではないから病院に行った方がいいよ。」
 
 不眠ならまだしも、よく眠れているというのに死神が見えるから行くなんてそれこそ、精神病院送りだ。
 そう思って、病院に行くのは止めた。
 行くべきだったのに、行かなかった